写真家を目指すと言い、会社を辞めてから5年程経った頃、私の写真と文章を新聞の生活欄に連載するという仕事を頂いた。その最中、無視していた田舎の母からの三度目の電話があり、電話をとった。

「山本くんていう同級生、おんさったやろ?」
彼の顔が浮かんだ。
「亡くなんさったって。」
「なんで?」
「ガンになっとんさったって。九ヶ月闘病しとんさったらしか。」

空腹だったことと、原稿が進まないことで苛立っていた。こういう時の正しい反応は、どれだろうかと頭を巡らせた。それがわからず、困惑し口ごもり、新聞連載の仕事はダメになったと、母に伝えた。