大学卒業後に就職した会社で、営業を担当した。毎日私が乗っていた営業車は、たばこの臭いが充満し、灰皿は汚れたままだった。営業先は周り尽くしていた。時間があまり、むやみに車を走らせていた。世田谷区の住宅街を運転していると、ラジオから福山雅治がカバーしたチューリップの『青春の影』が流れてきた。それは、大学時代に何度も聴いた曲だった。ラジオを聴きながら、狭い一方通行の道を運転していると、ボロボロと涙が溢れた出た。流れる曲と涙に気を取られ、どこに向かって車を走らせていたのかわからなくなり、車を止めた。ハンドルに顔を伏せ、じっと足元を見つめた。

大学の入学式のために父が買ってくれた革靴が、酷く傷付いていた。