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“Wet Scenery”

2015/03/24 – 2015/04/12  photographers’ gallery, KULA PHOTO GALLERY Acrylic paint on photographic paper and laser prints

“Photography No.1”

2011/04/26 – 2011/05/29 photographers’ gallery laser print / ed. 7 paper size:322×450mm

賃貸の家の更新に伴い、もう少し安い物件に引っ越しをしようと、中野坂上の不動産屋を訪れた。一戸建てに憧れて、物件を見に行くことにした。 訪れた一戸建ては、三方を建物で囲まれてた、日当たりの悪い、古い造りの家だが、内装はとても綺麗にリフォームをされた立派な2階建の家だった。中を見ると、風呂場やトイレ、階段などいたるところに手すりが取り付けられていた。ここにかつて住んでいた人物がすぐに想像できるものだった。隣にそびえ立つ高層マンションとの隙間は2mもない。その僅かな隙間に、とても細く小さな庭があった。庭園を真似ていくつか庭石が並べられており、うっすらと苔が覆っていた。 「ここに住んでいた方は、今はどうされたんでしょうね?」 私は、無意味な質問を不動産会社の男性に尋ねた。男性はその質問を少し受け止めて、答えずに次の話題を始めた。 庭先に目をやると、大きなウシガエルがピョンと飛び跳ねていた。

掲載誌:『月刊みすず』2017年9月号

月刊『みすず』2017年9月号の表紙写真に大島尚悟「滲んだ景色」が掲載されました。 月刊みすず http://www.msz.co.jp/book/magazine/ 大島尚悟『滲んだ景色』 https://pg-web.net/exhibition/nijindakeshiki/

掲載誌:『月刊みすず』2017年8月号

月刊『みすず』2017年8月号の表紙写真に大島尚悟「滲んだ景色」が掲載されました。 月刊みすず http://www.msz.co.jp/book/magazine/ 大島尚悟『滲んだ景色』 https://pg-web.net/exhibition/nijindakeshiki/

掲載誌:『月刊みすず』2017年7月号

月刊『みすず』2017年7月号の表紙写真に大島尚悟「滲んだ景色」が掲載されました。 月刊みすず http://www.msz.co.jp/book/magazine/ 大島尚悟『滲んだ景色』 https://pg-web.net/exhibition/nijindakeshiki/

Web掲載:新宿経済新聞 2017年4月21日

https://shinjuku.keizai.biz/headline/2473/

掲載紙:「ギャラリーbe 」朝日新聞 be on Saturday 2013年8月〜11月

年末に友人と二人で、川崎にある墓地を訪れた。共通の友人であった故人の墓参りには、命日ではなく年末に訪れるのが恒例になっていた。墓参りを終え、広い墓地を歩いていると、十代で亡くなった人物の墓を見つけた。ふと「親子が燃えている、という通報があった」と、無理心中を伝えるニュースを思い出した。その事件の人物を切迫した行動に突き動かしたものと、私が年末に墓参りをする理由は似ているように思えた。墓地には、掃除がし易すそうな造りの、まだ名前が彫られていない墓石がいくつか建てられていた。

アルバイトの夜勤明け、住宅がひしめき合う杉並区の自宅アパートに帰宅した。昼夜が逆転した生活を繰り返し、日中の睡眠が浅くなっていたため、3種類の睡眠剤を服用するようになっていた。薬を飲み耳栓をし、ベッドに横になった。しばらくすると、外から釘を打つ甲高い音が響きわたった。アパートの隣のわずかな敷地に、住宅の建設工事が行われていた。これから工事が始まるようだった。 古い六畳間の部屋の天井を見つめ、東京の人口が何人になれば住みやすい街になるだろうかと、とりとめもなく考えた。 ふと、住宅工事の騒音の間から、ピアノの音色が聴こえててきた。リスト作曲の「ラ・カンパネラ」だった。どうやら、階下の部屋から聴こえてくる。私は、ねじ込んでいた耳栓を外し、目を閉じ再びベッドに横になった。