賃貸の家の更新に伴い、もう少し安い物件に引っ越しをしようと、中野坂上の不動産屋を訪れた。一戸建てに憧れて、物件を見に行くことにした。

訪れた一戸建ては、三方を建物で囲まれてた、日当たりの悪い、古い造りの家だが、内装はとても綺麗にリフォームをされた立派な2階建の家だった。中を見ると、風呂場やトイレ、階段などいたるところに手すりが取り付けられていた。ここにかつて住んでいた人物がすぐに想像できるものだった。隣にそびえ立つ高層マンションとの隙間は2mもない。その僅かな隙間に、とても細く小さな庭があった。庭園を真似ていくつか庭石が並べられており、うっすらと苔が覆っていた。
「ここに住んでいた方は、今はどうされたんでしょうね?」
私は、無意味な質問を不動産会社の男性に尋ねた。男性はその質問を少し受け止めて、答えずに次の話題を始めた。

庭先に目をやると、大きなウシガエルがピョンと飛び跳ねていた。